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【真実一路】内田晋也の投資コラム

【7月7日】~徴兵か傭兵か~

2023年7月7日

日本の一般庶民が「国家」というものに参加したのは、明治政府の樹立からになりますが、国家の一員になると言う事が庶民の生活にじかに突き刺さってきたのは、徴兵制度の開始からでしょう。

国民皆兵の憲法のもと、明治以前には戦闘に駆り出されることのなかった庶民が兵隊になったわけです。

近代国家と言うものは国民に必ずしも福祉のみを与えるものではなく、戦場での死をも強制するものとなりました。

ちなみに日本の戦国期のいわゆる戦(いくさ)では、足軽にいたるまで兵隊は職業で、その職業から逃れる自由も持っていたし、もっと巨大な権利は、仕えている殿様が無能であった場合、その支配下から逃れる自由さえもっていました。

このため、戦国の無能な殿様は、敵に負けるよりも先に、部下の兵隊が彼らの主人を裏切って散ってしまう事によって自滅の道をたどる訳です。

ところが、明治維新によって誕生した近代国家はそうではありません。

憲法によって庶民を強制的に兵士にし、そこから逃れる自由を認めず、戦場にあっては無能な指揮官が無謀な命令を下そうとも、服従以外ありえなかったのです。

もし命令に反すれば抗命罪という死刑を含む刑法が用意されていたし、国内で帰りを待つ家族にまで累が及ぶ可能性すらありました。

国家と言うものが庶民に対してこれ程に重くのしかかってきた時代はそれ以前にない。

それでも、明治の庶民にとってこのことがさほど苦しくなく、時にその重圧ですら真正面からポジティブに受け止めたのは、庶民が国家というものに初めて参加した世代であったし、強烈な建国精神に突き動かされていたからに他ならないのではないでしょうか。

日露戦争時、特に203高地における日本軍兵士の驚嘆すべき勇敢さや、太平洋戦争時、ペリリュ―島での92%にも及ぶ恐るべき致傷率の高さと言ったものは、そういう歴史的精神と事情が波打っていると思うのです。

上は余談。

ブリゴジン氏率いる民間軍事会社「ワグネル」がプーチン政権に対し反旗を翻しました。

反乱の動機はワグネルをロシア軍の指揮下に入れようとしたことに対する反発のようですが、結局のところ約束していた武器・弾薬、あるいは資金提供と言う名の報酬を出し渋ったことが原因のようです。

金の切れ目は縁の切れ目なのでしょうかね。

ロシア兵の多くは契約兵であり、囚人兵であり、しょせんはカネ狙い。

作戦の命令者も「こいつらには金を支払っているのだから」と言う事で、危ない橋もいとわず渡らせ、アゴでこき使う。

その恨みつらみが積み上がり、傭兵という暴力組織が国家権力に噛みついたのでしょう。

建国精神を背負って戦った明治日本の庶民あがりの兵隊にみる勇敢さなど足元にも及ばない、戦術、士気、装備の問題を露呈したロシア軍に、祖国防衛のために戦っているウクライナ軍に勝利するなど有ろうはずもないではないか。

サボロジエ原発の安全性を人質にとったところを見ても、軍略の行き詰まりが透けて見えます。

この時代遅れの帝国主義、そして権力の集中した人治国家の見直しを速やかに講じないと、ロシア人自身がこの間違いを大量の血であがなう事になる。

つまり、傭兵などではない、善良なる一般庶民の政府に対する勇敢さに期待したいのです。

投資調査部 内田







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内田晋也(うちだしんや)

略歴

1973年千葉生まれ。大学時代は経済学部にて国際貿易金融論を専攻し卒業。1996年より現三菱UFJモルガンスタンレー証券にて営業職として勤務。20歳代で手数料ランキング1位を成し遂げる。その後、極東証券に移籍しディーラーへ転身。ポジション3000万からスタートし、そこから6000万→1億→3億→6億と目覚ましい活躍をするも、これまで20年間で培った経験を個人投資家へ伝えたいとの思いから投資助言の道へ。2017年7月よりG&Dアドヴァイザーズへ入社し現在に至る。