内田晋也の株式投資コラム
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公開日:2022年9月16日
「長期的にみると、我々はみな死んでしまう」は、経済学者ケインズが残した言葉です。
字面だけを見ると当たり前ですが、他の経済学者たちへの批判を含んでいます。
経済に今嵐が吹いていても「長期的には」落ち着くのだから、自然に任せればいいという学者がいます。
神の見えざる手に代表されるマルクス経済学がその筆頭でしょう。
そうではなく、目の前の問題に可能な限り手を打つべきだと言うのがケインズの立場でした。
「長期になどと呑気な事言ってないでやるべきことをやれ!」そう言いたいのでしょう。
もしケインズなら日本経済をどうするか?
今、世界のどの国でも頭を抱えているのがインフレの危機です。
とりわけアメリカのインフレの勢いは凄まじく、8月は前年比で8.3%の上昇でした。
この数値は第2時オイルショック後の1981年前後に並ぶ約40年ぶりの高水準です。
もしかすると、もう一段上昇する可能性もあるのではないか、それもかなりの確率で。
それは、他の企業が値上げをするから、自分の企業も値上げをする。
この「インフレ予想の定着」と呼ばれる現象とそれに付随する「便乗値上げ」が予測されるからに他なりません。
でも、結論を言えば私はこのインフレは今年いっぱいで一旦収束に向かうと見ています。
上は余談です、問題は日本なのです。
日本のインフレ率は約30年ぶりに前年比2%に到達しました、数字の上では「政府・日銀が掲げる2%の物価安定目標」を達成したことになります。
しかし、これは政策が効果を発揮したからではありません。
ロシア・ウクライナ戦争を背景とした食料・エネルギー価格の上昇プラス円安と言う外的要因が値上がりの本質です。
先述したアメリカのインフレ率に比べれば、日本のインフレ率はまだはるかに低いわけで。
もしかすると、日本は根本的なデフレ脱却に至っていないのかも知れません。
デフレが諸悪の根源であり、悪の枢軸であるならば、その処方箋な何か。
ずばり、賃金の上昇。ここに尽きると思います。
企業は利益を得ても内部留保として溜め込み、その上にあぐらをかいています。
企業としては正しいでしょう、でも日本全体としては経済を減速させてしまうことなのです。
岸田さん、ここは1つ経団連を敵に回す覚悟で、内部留保の水準にメスを入れてみるのはどうでしょう。
大幅に切り崩して賃金を上げることに向かわせる法整備こそ、「新しい資本主義」の名にふさわしいのではないでしょうか。
黄金の3年を手に入れた今、怖いものなど何もありません。
上手くいけば、停滞する日本経済に荒療治を施した革命家として、長くその名が刻まれることでしょう。
日本国家に死が訪れる前に可能な限り手を打つべきなのではないでしょうか。
国葬するだのしないだの、そんな事はどうでもよいのです、もっと大きな問題に対処して欲しいのです。
投資調査部 内田
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内田晋也(うちだしんや)
1973年千葉生まれ。大学時代は経済学部にて国際貿易金融論を専攻し卒業。1996年より現三菱UFJモルガンスタンレー証券にて営業職として勤務。20歳代で手数料ランキング1位を成し遂げる。その後、極東証券に移籍しディーラーへ転身。ポジション3000万からスタートし、そこから6000万→1億→3億→6億と目覚ましい活躍をするも、これまで20年間で培った経験を個人投資家へ伝えたいとの思いから投資助言の道へ。2017年7月よりG&Dアドヴァイザーズへ入社し現在に至る。
©G&D advisors.