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【真実一路】内田晋也の投資コラム

【3月18日】~5000円の甘い罠~

2022年3月18日

2022年度の予算案が来週中にも成立する見通しとなりました。

一般会計予算総額は107兆5964億円と10年連続で過去最高を更新しています。

社会保障関係費と防衛費が過去最高となったほか、新型コロナウィルスの感染拡大に備えて5兆円の予備費を積んだ内容となりました。

これにより参院選に向けた景気対策の動きが出始めています。

丁度タイミングよく「まん延防止等重点措置」が全国で終了するようなのでGOTOトラベルなど、次の財政出動の議論が盛り上がることになるでしょう。

米国でも輸送株が人気化しています、日本でも運輸株の他、観光関連が動意付きとなるか期待が持てそうです。

それとは別に与党幹部は約4000万人の年金受給者らを対象に臨時給付金を配る案をまとめ、岸田首相に実施を提言しました。

一人あたり5000円を臨時で給付する案が浮上しています。

今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策ではとの声も上がっており、まだ紆余曲折がありそう。

実は日本の年金制度、「マクロ経済スライド条項」なるものがあり、賃金が下がると受給額も連動して減少します。

コロナ禍で賃金が下がっていることを踏まえて、2022年度は2年連続で年金受給額は下がることが決まっています。

それともう一つ、インフレ時は物価が上がっても、受給額は物価と同じように上がるわけではないことも決められています(スライド調整率)。

2023年はインフレが進むことが決定的となり、物価上昇でも受給額が減ることが現実的になりました。

なにしろ生産者物価指数は、約8%も上昇しています。

物価が上昇することで、年金生活者は今年後半ぐらいから生活が苦しくなるでしょう。

それを見越して、票を逃さないために選挙前に5000円を支給しようとの魂胆です。

有権者はこの政策(5000円給付)に対して喜んで選挙に臨むのでしょうか、それとも怒り(スライド調整率の撤廃)に立ち上がって選挙に臨むのでしょうか?

行動経済学によれば人類はだいたい前者だといわれていますが、日本人はどうでしょう。

投資調査部 内田
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内田晋也(うちだしんや)

略歴

1973年千葉生まれ。大学時代は経済学部にて国際貿易金融論を専攻し卒業。1996年より現三菱UFJモルガンスタンレー証券にて営業職として勤務。20歳代で手数料ランキング1位を成し遂げる。その後、極東証券に移籍しディーラーへ転身。ポジション3000万からスタートし、そこから6000万→1億→3億→6億と目覚ましい活躍をするも、これまで20年間で培った経験を個人投資家へ伝えたいとの思いから投資助言の道へ。2017年7月よりG&Dアドヴァイザーズへ入社し現在に至る。