内田晋也の投資コラム
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公開日:2021年7月2日
【7月2日】〜恍惚の人から49年〜



1972年に発刊された有吉佐和子さんの小説『恍惚の人』が世に出てから49年が経過しました。

認知症(当時は老人性痴ほう症)を初めて本格的に描いたこの小説は多くの話題を呼び、大ベストセラーに。

翌年には森繁久彌さんが主演を務め映画化されるなど、高齢化の問題、認知症や介護の問題を、先駆的に社会へ突きつけました。

暴言を吐き、徘徊し、食事を済ませたことを忘れ、糞尿をもてあそぶ。

老いて永生きすることは幸福か? 日本の老人福祉政策はこれでよいのか? 誰もが迎える〈老い〉を直視し、世に問うたのです。

49年たった今も介護する側には大変な労苦をもたらしていますが、実は一つの光明が見え出してきました。

日本の製薬大手エーザイが米バイオ医療品大手バイオジェンと共同開発した「アデュカヌマブ」が米食品医薬品局(FDA)に承認されたのです。

脳内から病気の原因とされる物質を取り除いて、認知機能の低下を遅くする効果があるそう。

これまで多くの薬が開発されてきましたが、一時的な症状の改善しかなかったそうで、今回の「アデュカヌマブ」はアルツハイマー病の発生メカニズムに直接作用する、前例のない治療薬だそうです。

認知症の患者は世界で5千万人、日本で600万人いると推計され、そのうちアルツハイマー病は6〜7割を占めるそうです。

国内の患者や介護する家族にとっては希望となるでしょうし、認知症の克服に向けて、大きな一歩となることに期待したいです。

しかし、多くの人が利用できる一般的な治療薬となるかは多くの課題が残ります。

特に薬価においてバイオ技術を用いた抗体薬にあたり、製造コストがかなり高額です。

2社が示した価格の目安は月一回の点滴で約47万円、年間610万円、しかも治療は長期間に及ぶとのこと。

公的医療保険制度の財政を圧迫することも考えられるので、社会でコストをどう受け入れていくのか議論が欠かせないでしょう。

そしてもう一点。

脳浮腫や脳出血が起きるリスクも指摘されています。

どうやら簡単に解決とはいかないようですね。

認知症を含めて難病と言われるような病気になった場合、死のリスクと治癒の可能性との間で突きつけられるパーセンテージをどう受け止めるのかはその時になってみないと分かりません。

希望の言葉しか聞かない、聞こえない耳になってしまうのか、心配し過ぎて可能性に賭けることを選ばないことになるのか。

医学を含めて科学の進歩は死屍累々の屍の上に成り立っています。

私自身もその恩恵を受けてきましたし、これからもそれが未来に繋がっていくのでしょう。

進歩と引き換えに犠牲を要求してきたのが科学ですから、経済的対価も含めて深く考えさせられる一件と言えるでしょう。

金勘定が好きな、強欲な小生にはしばらく認知症の問題はないと思いますが。

投資調査部 内田
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