投資の前にコレだけは知っておこう!

【01/13】第325回 投資詐欺の見極め方(その1)

2023年1月13日

最近、立て続けに投資詐欺にあったと思われる人から相談を受けました。
相談者の共通点は、まさか投資詐欺だとは思わずに、信じて投資をしたようです。最初のころは予定どおりの分配金がもらえたものの、しばらくすると分配金が振り込まれなくなり、解約しようとしても解約できずに、お金もまったく戻ってこなくなってしまったようです。
 調べてみると、1年ほど前に、証券取引等監視委員会(SESC)から、報道発表が行われていた案件でした。その投資商品(?)を販売していた業者は、金融商品取引業の登録もなく、顧客への説明もいい加減で、運用の実態そのものが確認できなかったようです。
もちろん、その事実だけで投資詐欺だと断定することはできませんが、金融商品取引業の登録もなく顧客から資金を集め、実際に運用していた形跡がないということからすると、投資詐欺である可能性が非常に高いと思われます。おそらく、「ポンジ・スキーム」を利用した投資詐欺でしょう。
ポンジ・スキームというのは、投資詐欺のなかでも最もメジャーなスキーム(仕組み)で、1920年代のアメリカで名を馳せた詐欺師であるチャールズ・ポンジの名前に由来するものです。
ポンジ・スキームの基本的な仕組みは非常にシンプルです。
例えば、100万円の投資に対して、毎月2%(2万円)の利益の分配を約束して投資を募ります。1年間で24万円(投資額に対して年24%)の利益が確実に得られることを信じさせて資金を集めるわけです。
そして、実際に預かった100万円から毎月2万円の分配金を支払っていきます。集めたお金(100万円)から1年間で24万円の分配金を支払うと、残金は76万円になります。ポンジ・スキームの場合、集めたお金を何らかの商品で運用することはしません。
それでも、顧客の立場からすると、100万円を投資して、着実に毎月2万円の分配金を受け取ることができ、1年間で24万円を受け取れたわけです。その事実だけで、完全に信用してしまうのです。
顧客から信頼を得た詐欺師は、さらなる新規顧客の勧誘のために顧客を利用します。新たな投資家を連れてきた人にはキャッシュバックをするなどと約束するのです。こうして新規資金がどんどん入ってくる仕組みを作っていきます。
 このポンジ・スキームは、分配金や解約金などの「出ていくお金」と、新たな投資資金の「入ってくるお金」を比べて、入ってくるお金のほうが多ければ、詐欺師にとっての手元資金は増えていきます。そして、手元資金がピークを迎えたころに、逃げるわけです。
 逃げられてしまうと、投資家は、分配金どころか解約金も戻ってこなくなります。分配金が振り込まれない、解約できないなどといった状況になってはじめて、投資家は騙されたのかもしれないと気付くのです。(次回につづく)
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菱田雅生(ひしだまさお)

  • ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
  • 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
  • 2級DCプランナー
  • 住宅ローンアドバイザー
  • 金融知力普及協会認定インストラクター

略歴

1969年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大手証券会社、独立系FP会社を経て、2005年8月よりフリーに。現在は、相談業務や、原稿の執筆、セミナー講師等に従事する傍ら、TV・ラジオ出演などもこなす。

書籍

「お金を貯めていくときに大切なことがズバリわかる本」すばる舎 (2018/1/25)

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